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一口に「電子書籍」といっても、実はそのフォーマット(データ形式)によってさまざまな種類が存在します。いわば、VHS対ベータ、Blu-ray対HD DVDのような規格争いが電子書籍においても繰り返されており、主流となりそうなフォーマットはどれか、常に留意しておく必要があります。
 さらに電子書籍は、出版物という文化を支える要素であり、ある意味で公共性をも備えることから、データとしての永続性を求められます。その意味でも、フォーマットの選択は重要といえるでしょう。
電子書籍フォーマットは、いくつかの基準により分類できます。

 

電子書籍フォーマットの分類

 

レイアウト方式の違い

 

 電子書籍フォーマットは、紙の印刷物と同様に所定のデザインに従って文字と図版を決まった場所に表示する「固定レイアウト方式」と、表示用デバイスや閲覧ソフトの設定に応じて文字と図版の流量を変えて表示する「可変レイアウト」の二方式に大別できます。

 

 固定レイアウト方式のメリットは、制作側が意図した通りのデザインで表示できること。
その代表的な存在が「PDF」で、紙の印刷物向けのデザインそのままを電子書籍ビューワーで再現できます。「JPEG」などの静止画ファイルも、デザインを変更できないという意味では固定レイアウト方式に分類できますが、拡大表示するとジャギーが発生し滑らかさが失われてしまいます。その点PDFは、文字やベクター画像はどのような画面サイズ/解像度でも適切に表示できるため、静止画ファイルより優れているといえます。
デメリットは、レイアウトを崩せないこと。作成時に想定された表示領域以外の表示、例えば画面サイズの大きなiPadとスマートフォンのiPhoneで同じ固定レイアウトの電子書籍を見た場合、iPadでは1ページにより多くの文章や画像を入れたくてもできないし、
逆にiPhoneでは文章や画像が多すぎて小さく読みにくく感じる場合もある、という具合です。

 

 可変レイアウトは、デバイスの画面サイズに沿った表示が可能なうえ、ハードウェアを縦横どちらの状態で持って閲覧しても、それに応じた表示を行ないやすい。
この点がメリットで、小説など文字主体の電子書籍に向いています。
デメリットは、雑誌やマンガのような凝ったレイアウトデザインの実現が難しい点。

 

仕様策定プロセスの違い

 

 フォーマットは、特定の企業が権利を保有する「プロプライエタリ(proprietary)なフォーマット」と、権利が「オープンなフォーマット」の2種類に大別できます。

 

 プロプライエタリなフォーマットの例としては、AmazonのKindleが採用する「Topaz」、ボイジャーの「.book」(ドットブック)やモリサワの「MCBook」など。
これらのフォーマットで電子書籍を作成する場合には、契約を交わすなどして専用の制作ツールを入手し、所定の方法で作業することが原則です。

 

 オープンなフォーマットには、米国の標準化団体IDPFが推進する「EPUB」が挙げられます。特定の制作ツールを必要とせず、アプリケーションを選ぶ自由度は高い。

 

 PDFと、シャープが策定した電子書籍フォーマット「XMDF」は、プロプライエタリとオープンの中間的存在。PDFは、国際標準化機構ISOに、XMDFは国際電気標準会議IECに、それぞれ認定されている国際標準規格です。

 

機能の違い

 

 電子書籍フォーマットを選ぶ基準は、出品先のオンラインストアが定める形式だからということが最大の理由として挙げられることが多い。
しかし、フォーマットごとの機能差もまた判断の基準となりえます。
 日本の場合、小説など読み物の多くは縦書きで右から左へとレイアウトされているため、これに対応するかどうかは重要なポイント。
ルビや圏点、縦中横といった日本語組版で多用される表示は、海外発の電子書籍フォーマットではサポートされないことが多いため、これらを併せて「日本語をサポートしているかどうか」の判断基準とします。EPUBやTopazなど世界規模で流通しているフォーマットは、このサポートが後手に回る傾向があり、その意味では日本発のフォーマットとPDF以外は(現状では)日本語対応でないといえます。

 

それぞれのフォーマットについて

 

<AZW/MOBI、Topaz(Kindle)>

 

Amazonの電子書籍プラットフォーム「Kindle」は、2つの専用フォーマット(「AZW」と「Topaz」)に対応。ハードウェアとしてのKindleそのものはバージョン2(Kindle 2)からPDFをサポートしていますが、Amazonで販売されている電子書籍タイトルは、AZWかTopazのいずれかとなっています。
 表示はリフロー(可変レイアウト)が基本。「Topaz」(.tpz)は、フォントの埋め込みをサポート。そのぶんAZWに比べファイルサイズが大きく、表示速度に劣る。
AZWの作成用には、「KindleGen」が登録の必要なしに無償提供されていますが、Topaz用は一般公開されず契約を交わした企業に限定。
 Kindleは、専用端末以外にもWindows/Mac OS Xやスマートフォン(iOS/Android)上で動作する閲覧ソフトを無償配布しています。
読者情報や読んでいる途中のページ数は同期されるため、Windows/Mac OS X用ビューワーで読んだ続きをiPhone/iPod touch/iPad/Androidで読む、という使い方も可能。

 

<EPUB>

 

 AppleのiPad/iPhoneやGoogle eブックストアなどが採用する「EPUB」は、米国の標準化団体IDPFが策定を進める電子書籍フォーマット。
ロイヤリティーのないオープンなフォーマットであるうえ、Apple、Barnes & Noble(Nook)、Google、ソニー(Reader)など多数の企業が対応していることもあり、世界に向けて発信できる電子書籍フォーマットとみなされています。
Appleが「iBooks」でEPUBをメインの電子書籍フォーマットとして採用すると発表し、一気に注目が集まりました。
表示はリフロー(可変レイアウト)が前提。ウェブの技術をベースとしているうえ、欧米のメンバーを中心にフォーマットの仕様が固められた経緯から、旧仕様(EPUB 2.0.1)では横書きなど日本語の組版に欠かせない機能のいくつかがサポートされていませんでしたが、「EPUB 3.0」では、縦書きがサポートされ、禁則処理や傍点についても対応される予定で、日本語のサポートは大幅に向上しています。

 

<XMDF>

 

 シャープが策定したXMDFは、同社小型端末「ザウルス」向け電子書籍配信サービス用として登場して以来、多くの電子書籍サービスに採用された実績を持ちます。NTTドコモの「M-stage book」サービスやKDDI(au)の「EZ-book」サービスをはじめ主要携帯キャリアに公式採用されていることもあり、十分有力な電子書籍フォーマットといえます。
 表示はリフローを基本としたもので、そこに多彩な日本語表現を可能にする仕様がいくつも盛り込まれています。
 小説などの文芸書、コミックで豊富な採用実績を持つことも、XMDFの特徴のひとつ。
対応コンテンツの市場流通ボリュームは、小説など文字中心のものが3万点、コミックが6万3000点、辞書が100点。
 各種表示効果や音/振動など、携帯電話向け電子コミックをターゲットした表現方法をサポートしています。

 

 

<.book(ドットブック)>

 

 ボイジャーが提唱する.bookも、日本で広く利用されている電子書籍フォーマットのひとつで、表示はリフローが基本。

 

<PDF>

 

 レイアウトが紙の印刷物に忠実(リフローできるよう出力することは可能)なため、スマートフォンのような小型端末で長文を読む用途には不向きとされていますが、逆にいえば、紙の印刷物をほぼそのままのデザインで電子化できるため、雑誌のようにレイアウトが重要なコンテンツでは本命視されています。

 

<CEBX/JEBX>

 

 中国の方正グループが提唱する「CEBX」およびその日本語対応版「JEBX」は、縦書きのサポートなど日本語の電子書籍に活用できるスペックを備えた電子書籍フォーマット。同社は中国国内の新聞社向け電子出版システムでトップシェアを持ち、中国の電子書籍の約8割はCEBXで提供されている。
電子書籍ビジネスをグローバルに考えた場合、同じ漢字文化圏という共通項を持つだけに、今後の可能性に注目。

 

フォーマット相互の変換について(電子書籍交換フォーマット)

 

 ここでいう電子書籍交換フォーマットとは、統一規格を策定し、異種電子書籍フォーマット間の橋渡しを行なおうというもの。代表提案者は日本電子書籍出版社協会、共同提案物者には印刷大手のほかにシャープとボイジャーが名を連ねています。
要は、「この形式で保管していれば未来にわたり資産として活用できる」フォーマットであり、コンテンツを所有する出版社だけでなく、端末による区別なくすべてのコンテンツを入手できるようになる消費者にとっても、メリットが大きいと考えられます。
 しかし、XMDFや.book、EPUBなどの複数フォーマットに対応した変換ツール(ソフトウェア)の開発には時間を要すと考えられ、その間にも仕様が見直されるフォーマットが予想されます。時間がかかれば、それだけ(電子書籍交換フォーマットの)変換ツールがカバーする電子書籍フォーマットは旧仕様となる可能性が高くなります。
 意義はあるが、実用的かどうか、普及するかどうかは別問題。その動向が注目されています。

 

 

 

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